管理栄養士として透析患者さんの栄養管理を担当して数年経ちますが、体重と食事の管理は難しいとつくづく思います。
透析とは、病気で腎臓がうまく機能しない人の腎臓の働きを代行する治療の一つです。腎臓の働き=代表的には老廃物や余計な水分の除去(排尿の変わり)を助けます。しかし、腎臓は24時間365日働いていますが、透析は通常週3回、1回4時間程度です。この短期間で腎臓の代行をするわけですから、限界はあります。
この短期間で除去できる範囲の食事量、水分量にする必要がある、ということです。
どのくらいにするのか、それは一つ体重が目安になります。この目安の体重のことをドライウエイト(DW)と言います。ドライウエイトは、血圧、心胸比など総合して患者さん毎に決めていきます。各種データからちょうどいい体重を設定する、ということですね。
患者さんはこのドライウエイトから大幅に体重増加しないように、食事や水分摂取量を調整し、医療スタッフは、透析後にはこのドライウエイトに体重が戻るように老廃物や水分を透析で除去します。双方がドライウエイトを中心に体を管理しているのです。
しかし、私たちは毎日同じ物を食べているわけではなく、もちろん飲む水分の量も異なります。食べ過ぎてしまった場合は、ドライウエイトから大幅に体重が増加し、1回4時間の透析では除去しきれない、そんな事態も多くみられます。体には余計な水分が溜まり、酷い時には呼吸苦が現れることもあります。
それでは、食事量が少なく痩せてきてしまった場合はどうでしょうか?
実はこの状態も、減少したのは筋肉量や脂肪量のため、体に余計な水が溜まっていることになるのです。早めにドライウエイトの下方修正が必要になりますが、これを度々拒否する患者さんがいらっしゃるのです。
「食事は極力減らした方がいいと思っている」「ドライウエイトを減らしたら、食事がもっと食べられなくなる」という患者さんの訴えをよく聞きます。
余計な水分は除いた食事が望ましいですが、決して食事を極力減らすことが良いことではありません。むしろ、透析患者さんにはしっかり栄養を摂っていただきたいのです。
「水分の少ない栄養のある食事」を、もっとわかりやすく伝えていかねばならない!と強く思った次第です。