こんにちは、管理栄養士の清水です。今月のテーマは「脱水症」を取り上げます。
皆さんは日頃何を飲むことが多いでしょうか?季節によっても異なりますね。最近の日本の夏は猛暑が多いですので、熱中症や脱水症予防で水分の摂り方に気をつけていらっしゃる方が多いと思います。
水分の摂り方に気をつけたい「脱水症のピーク時期」が通常は年2回あったのをご存知でしたでしょうか?
一つ目のピークは夏の暑い時期、まさに今です。では二つ目のピークは?
実は寒い乾燥した時期です。風邪やインフルエンザ、ノロウイルスなどからくる発熱、下痢等による脱水症が原因となります。しかし新型コロナウイルスが蔓延した現在は、通年になりつつありますね。ワクチンによる副反応でも発熱で脱水症になりかけてしまったなどもあるようです。
このような事態を予測して、家庭でもあらかじめ脱水症対策が取れるといいですね。
【身体の中の水分】
一般に、成人の体内水分出納は、
<体内に入る水分>
食べ物の水分1,000ml、飲料水1,200ml、代謝水(栄養素が体内で燃焼されるときにできる水)300ml→合計2,500ml
<体外へ出る水分>
尿・便1,500ml、汗100ml、不感蒸泄(呼気や皮膚等から蒸発する水分)900ml→合計2,500ml。
このように体液は一定に保たれています。新生児で体重の80%、成人で60%、高齢者では50%を占め、ヒトが生命を維持する上で非常に重要な物質です。
激しい運動や炎天下での発汗量増加、発熱や下痢による体液の喪失等により、水分出納のバランスの乱れが脱水症の原因となります。この体液が失われた状態(脱水症)は危機的状況なのです。
体液中には水分のほかに、電解質(ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンなど)が存在しています。身体から体液が失われる脱水症では、水分と共に電解質も失われるために、生命に危機的変化を生じさせるのです。
【脱水症時の飲料:経口補水液。スポーツドリンクとの違い】
脱水症で体液を失った時には、その成分から水分と電解質(主にナトリウムイオン)を含んだ飲料を補うことが必要となります。
ここで思いつく飲料は「スポーツドリンク」でしょうか。また、最近は「経口補水液」という飲料を見る機会も増えたことと思います。では、どのように飲み分けたらよいでしょうか?
いずれも必要な水分と電解質を補うことを目的に作られた飲料ですが、スポーツドリンクは飲みやすいように糖分や香料が加えられています。一方、経口補水液はスポーツドリンクに比べて塩分が多く、糖分が少ないために美味しくない、と思われる飲料です。
実は、小腸で水分と電解質を速やかに体内に吸収させるためには、この「糖分と塩分(ブドウ糖とナトリウムイオン)」の割合が非常に重要で、脱水症の改善において飲みやすいかどうかで比率を変更することはできないのです。経口補水液の組成には世界基準が用いられています。
(※ブドウ糖とナトリウムイオンのモル濃度比率:1〜2:1を超えない。ヒトの血漿浸透圧(285mOsm/L)を超えない。)
体は体液が不足していない場合、経口補水液を飲んでも美味しいとは思わないのですが、脱水症を発症した身体では同じ組成の飲料を飲んで美味しいと感じる場合が多いのです。経口補水液を美味しいと感じて飲む場合は、脱水症である可能性が高いということになりますね。経口補水液は、脱水症を経口的に改善する飲料です。
脱水症でない状態=概ね食事が摂れていて、水分を補給したい場合や予防的に水分摂取をするときには、スポーツドリンクはじめ、アルコール以外であればどのような飲料でも、水分の補給効果はあります。(ただし、利尿作用のあるコーヒーなどばかりにならない方が良いです)
しかし、スポーツドリンクばかり飲み続けた場合は、糖質濃度が高いため高血糖を引き起こし、血液浸透圧は上昇、喉の渇きは増強し、さらに高血糖を引き起こすという悪循環を招くことになりますので注意が必要ですね。
【手作り経口補水液】
経口補水液は、ドラックストアなどで手軽に購入できるようになりましたが、緊急的に必要になった場合などに手作りレシピと飲み方の注意点を覚えておかれるとよいと思います。
<経口補水液の作り方>
・水(湯冷まし)1L、食塩3g(小さじ1/2)砂糖20〜40g(大さじ4と1/4)(※ブドウ糖10g〜20g)
(レモン果汁:入れすぎると浸透圧が高くなり吸収が悪くなるので注意)
<注意点と活用のコツ>
・計量を間違えない。(糖分と塩分の比率が大切)
・衛生的に扱い、保存しない。
・一気飲みせずゆっくり飲む。(イメージ:飲む点滴。例:500ml /1時間くらい)
・濃度を変えない。
・氷を入れたり、凍らせない。
だんだんと秋の装いを感じる頃になり、熱中症は落ち着いてきていると思いますが、新型コロナウイルスの勢いは増し、発熱や食欲不振での脱水症を招く恐れは多くあると思われます。
お身体の状態に合わせて上手に水分を摂取していただきたいと思います。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
管理栄養士 清水里子^^